名詞figureの「形, 姿; 図; 比喩」の意味は、語源であるラテン語figuraの意味を受け継いでいる。
中英語で現れる「数字」の意味の由来について、梅田修『英語の語源事典』は、「イスラム教徒との接触によって学んだアラビア数字の特異な姿から0から9までの字形を意味する言葉として使われた」と説明している。今日では名詞figureは、広く「数字、数」、さらに「数字の桁」や「価格」という発展的な意味でも使われている。
算用数字(アラビア数字)に依拠する生活をしながら、それがどのような経緯で私たちの社会に入ってきたのかを知る機会は少ないのではないだろうか。英単語figureをきっかけに、インド起源の数字や筆算法が、アラビア文化を介してヨーロッパに伝えられたときの衝撃を想像してみるのは意義あることに思われる。
ここでは、インドの数字と筆算法が西方へ伝えられたことを示す最初の証拠として知られる、ウマイア朝シリアの学僧の残した7世紀の記述を紹介する。
≪わたしは、インド人の科学、ギリシャ人やバビロニア人以上に独創的な天文学上の発見、筆紙につくせぬ計算の巧妙についての論議をひかえよう。それでもこの計算が、九個の記号によってなされることだけは述べたい。ギリシア語を話すという理由だけで自分たちが科学の限界に達したと信じている人たちが、もしもこのことを知ったなら、何ものかを知っている人間が自分たちばかりでないことに納得するだろう。≫(森毅『数学の歴史』から)