orgy 名詞  *werg- 表5>13
=========* 註 *=========
orgy は今日では「飲めや歌えのどんちゃん騒ぎ」「ドラッグあり、セックスありの乱れたパーティー」のことであるが、 語源であるギリシャ語 orgia は、ディオニュソスの密儀のことである。

神話によれば、ディオニュソス(英語では Dionysos またはDionysus) は、ゼウスが半神半人のセメレを愛して 生まれた子 で、ゼウスの正妻ヘラの怒りによって狂人とされた。漂泊の身となったディオニュソスは旅の途中で葡萄の木を発見し、やがて 小アジアの女神レアによって清められ秘儀を授けられる。こののち彼は熱狂的な女性信者を引き連れて、レアから学んだ秘儀と 葡萄(酒)を広めるための世界遍歴を開始した。

ディオニュソス信仰の中核は、神がかりになった信者たちが霊杖を持って山野を踊り歩くことで、民衆の信仰を集める一方で、 これを軽蔑し敵視する貴族も多かったらしい。ディオニュソスは、自分を侮蔑し信仰を拒否する者たちを狂わせ、時には殺害し、 さらに錯乱の中でわが子を殺させるという復讐を繰り返した、と神話には書かれている。剣ならぬ魔力によって信仰を布教したの である。

ディオニュソスの密儀宗教は前六世紀ごろから急にさかんになり、ディオニュソス祭は全市民の関わる国家的行事にまでなった。 この祭儀について、村田数之亮『ギリシア』は次のように述べている。

ディオニュソス はローマではバッカス(英語では Bacchus) のことであるが、この神の秘儀はローマの大衆の心もとらえ、しばしば大規模な orgia が行われ、政府に弾圧されたという。orgy という語を覚えるとき、あるいは orgy なる ものを体験したときには、ギリシャがローマに伝えたものは 「理性」 だけ ではない、ということを思い出してみよう。