pedestrian 形容詞 <*ped- 表1>5
=========* 註 *=========
ラテン語 pedester には、語源「足」に直結する、「徒歩の」「歩兵(隊)の」「陸上での」などの意味のほかに、
「散文の」「ありふれた」という隠喩的な意味がある。
この隠喩的意味のうち「ありふれた」は英語にも受け継がれているが、「ありふれた」と「足」はどのように関連するのであろうか。解明の一つのヒントになるのが、
「散文」に対するギリシャ人の考え方である。
風間喜代三『ラテン語とギリシア語』によると、紀元1世紀ごろ、ローマで著作を続けていたギリシャ人ディオニュシオスは、「散文」を
logos pezos (直訳すると「歩く言葉」)と表現しているという。同書にはディオニュシオスのこの表現について次のような言及がある。
詩のような韻律が無くても、躍動感のある魅力的な散文はあり、韻律があっても平凡でつまらない詩があることは、 ギリシャ人もローマ人も承知していたことだと思われる。それでも、韻律という「飾り」のない 散文を、「ありふれた」としてけなす風潮があったのであろうか。ちなみに、上に出てきたギリシャ語 pezos (歩兵) に も、「徒歩の」 「散文の」 「ありふれた」 の意味がある。