vitamin 名詞 <*gwei- 表3>11
=========* 註 *=========
英語 vitamin は
ポーランド出身の生化学者フンク (Casimir Funk) の造語 vitamine (1914年) を取り入れたもので、当初はこの綴りのまま使われた。
1911年、フンクは、米ぬかのエキスから鳥類白米病 (精白米を飼料にして飼育されたニワトリに発生する脚気様の神経炎) に治療効果のある物質を
抽出することに成功し、この物質が窒素 (N) を含み且つ塩基性 (酸と反応して塩を作る性質) であることを確認した。彼はこの物質をアミンの一種だ
と考え、ラテン語 vīta (生命) とアミン (amine) を組み合わせて vitamine と命名した。 ちなみにアミンは、
アンモニア (ammonia, NH4)
の水素原子
を炭化水素残基Rで置換した化合物の総称で、アンモニアの am と塩基性の化学物質であることを示す接尾辞-ine を合わせた語である。
フンクの研究の背景には、19世紀後半以来の実験栄養学の進展があった。四大栄養素(純粋な脂質、糖質、タンパク質、ミネラル)だけを混合した
飼料では、完全な栄養にならないことが動物実験で明らかになり、未知の微量な「不可欠栄養素 (indispensable dietary constituents) 」を探し当てる
ための熱心な研究活動が各国でくりひろげられていたのである。
1920年、イギリスの生化学者ドラモンド (Drummond) が、それまでに発見された「不可欠栄養素」を、フンクの造語を使って、ビタミンA, ビタミンB,
ビタミンC, …というようにアルファベット順に呼ぶことを提案した。このときドラモンドは、ビタミンがアミンである証拠はないのだから塩基性 (basic)
であることを示す接尾辞 -ine は使うべきでないとして、綴りを vitamin に改めることも提案した。彼の提言は両方とも受け入れられて今日
に至っている。