言語接触によって語尾変化が単純化される
デインローにおける両民族間の会話が実際にどんなものであったかを示す、確実な資料は
残されていない。しかし、両言語接触の様子について、いくらかは、我々が今日でも実際に体験することから想像できるのである。
語幹は同じなのに、語尾変化などが異なるために相互理解が円滑に進まないという状況というのは、例えば次のような
ものである。
A 「僕、辛いもの食べれないんです。」
B 「へえっ、辛いもんよう食べんの?」
A 「えっ?よく食べる?あの、僕、辛いもの…」
B 「だから、よう食べんの?」
A 「食べないんですよ。」
映画「ローマの休日」の中にも好例がある。
赤字の部分は本来ならそれぞれ、she'll tell you where she wants to go とI've never seen her before となるべきところである。 アメリカ人新聞記者ジョーは、身元不明の「泥酔状態」の女性(アン王女)が自分とは無関係の者であることを運転手にわからせ、なんとしてもこの女性を彼に 押し付けてしまう必要があった。片言英語のイタリア人運転手に自分の英語を理解させるためには、複雑な文法変化の部分を省略して、動詞の原型を使った方が わかりやすいという機転がはたらいたのだろう。