裏
技
的
英
単
語
暗
記
法
ここで「裏技的英単語記憶法」というのは、主として語呂合わせ的に英単語を暗記するやりかたのことです。
語源の知識に基づいて語彙を増やしていく方法が、多くの人が共有できる常識的な方法であるのに対して、
それぞれの母語の範囲だけに適用され数も限られている語呂合わせ式記憶法は、「裏技」と呼んで良いと思います。
「
犬が寝るから
kennel (
犬預かり所, 犬小屋) 」、
寒いときには
ちり (
chilly) 鍋
など、英単語を覚えるための語呂あわせを聞いたことのある人は多いと思います。最近私たちのメンバーの一人が学生から
教えてもらったのは、「
カンペイと (
compete)
競争する」というものです。
傑作だとは思いますが、
カンペイさんのマラソン姿が人々の記憶から
薄れていけば、この語呂合わせの効力もなくなるのではないかと心配です。
私たちもオリジナルなものができないか考えてみたのですが、簡単にはいかないものですね。なんとか支持が得られそうなものをいくつかあげてみます。
アルファベット順になっています
agony
マラソン実況中継で
アナウンサー 「あー、アゴを出してますねー、苦しそうですねー」
解説者 「あー、完全にアゴが出てます」
アナウンサー 「アゴに(agony)苦痛が出てますねー」
alias
門衛 「名前は?」
A 「Aであります!」
門衛 「よし、入れ。次!」
? 「Bでありあす (alias) !」
門衛 「偽名だな! 発音も悪いし...」
alter
アメリカ村で(修学旅行の思い出から):
先生 「計画書では大阪城にいることになってるんだがねー、ここにおるたー (alter)、どーゆーことかね?」
生徒 「そのー、少し計画を変えるのもありかなーって...」
ambulance
A 「(喉を指しながら苦しそうに)アン...ビュ...ランス...」
B 「ど、どーしたんすかー!?」
A 「あん(まんがー)...びゅ(っとつまって、通)...らんす...」
B 「ともかく、救急車を呼びましょー!」
antecedent
「アンタさぁ、デンと(antecedent) 前にいるけど何故なのよ。」
「『先行する』からです。」
arithmetic
一年坊主 「(お皿の中のナッツを数えながら) あっ、リスめ、ちっ、食 (arithmetic)ったな。」
リス 「ちっ、算数ができるんだ」
attitude
ふてくされている犯人に対して、火あぶりの刑をほのめかしながら役人が言った、「その態度では、今に 『あちっ (熱!)』 と言うでー (attitude) 。」
banishment
A 「追放 じゃー」
B 「どういうことですかあーっ!?」
A 「この場に住めんと (banishment) いうことじゃー」
cemetery
せめて立 (cemetery) 派な墓地に ...
claw
新聞記者 「ライオンと戦うのは大変でしょう?」
タカ 「かぎつめがあるから苦労 (claw) しません。」
名誉監督 「ワシはかぎつめがあっても苦労 (claw) したがな。」
coffin
棺(ひつぎ)を見て言った、「もう帰って来うへん(coffin)のやなあ・・・」
cogent
「こうして、ああして、こうなるじゃん! そうして、こうして、だから、こうじゃん!」
「なるほど!」
... こうじゃん!と (cogent) 説得力のある ...
compensate
「償うから 勘弁せい」と (compensate) ...
conscious
救急隊員 「助けに来ましたよー、わかりますかー?」
倒れている人 「...感謝す (conscious)」
救急隊員 「おっ 、意識があるな」
coy
A 「来い (coy)よ、って言っても来ないんだ...」
B 「内気なのかな、内気なふりをしているのかなあ。」
A 「モトカレが恋 (coy) しいの?って聞いても口が重いんだ...」
crow
2004年6月8日午後5時26分、愛知県春日井市の特別高圧線にカラスが接触した。その影響で電圧が低下し、ナゴヤドームの照明の約半分が消え、中日巨人戦の試合開始が15分遅れた。(出典は、トーチュウこと、東京中日スポーツ)
ドーム係員 「カラスで苦労 (crow) しました。」 (カラスで苦労 (crow) する人は多いですよね。)
ちなみに、我らがドラゴンズは木佐貫で苦労したものの、荒木のサヨナラ打で勝利した。
decayed
痛む歯を鏡で見ながら
「穴があいてる! デッケイど (デッカイぞ) (decayed)...虫歯になったな...」
decent
G (Giant?) さんは態度がでかいし、T (Tiger?) さんはやかましいし、S (Swallow?) さんは秋になるといなくなっちゃうし、C (Carp?) さんは実家に入りびたりだし、
B (Baystar?) さんははっきりしないし、やっぱりちゃんとした Dさんと (decent)、ってことにしよう。
destiny
「運命です...」
「...ですってネー (destiny) ...」
diameter
「あのすごいダイア、見たー (diameter) ?」
「うん、直径二センチはあったな。」
diarrhea
医者 「『大』ありあ (diarrhea) ?( 『大』がちゃんと出てますか )」
患者 「それが、何回も、つまり、下痢なんですうー!!!」
embarrass
embarrassed
「あいつら昔、付き合ってたよなー?
まー今さら、そんな縁、バラす (embarrass) と困惑させることになるな ...」
「縁、バラすと (embarrassed) 恥ずかしい、なんてね。」
emerge
A 「おっ、何か出てくる!」
B 「え?マジ (emerge) ?」
A 「ほら、現れる ...」
fury
庭木をアリに枯らされた人が、冬になっても死なないアリを見つけて叫びました。 「冬になってもうろついてんのかアーっ!」
冬アリ (fury) に 激怒
grant
「グラント将軍が認めるそうです。」
「おお、グラント (grant) が認めるか!!」
Hiram Ulysses Grant (1822-85) … 南北戦争時、北軍総司令官、のちに大統領。
lean (1)
リーン (lean)、リーン (lean)、と鳴く虫に耳を傾ける
maggot
昔話をするおじいちゃん「***の中にはウジ虫がまー、ごっつ(maggot)おったもんや・・・」
mature
たわわに実ったブドウを見つけたキツネは、一番熟した房に狙いを定めてとびつきました。しかし、どんなに高く跳んでもブドウ
の房に届きません。あきらめて立ち去るときに言いました。
「あのブドウはまだすっぱい。熟すまで待つわー (mature)」
mercy
お慈悲をくださいまーし (mercy) て、メルシー、 メルシー
niece
ニースの明光、 nieceは姪っ子 (ちなみに, 南仏コートダジュールの保養地 Nice の年間日照時間は2800時間. cf.日本平均は2050時間.)
noose
盗 (noose) んだヤツを首なわ (縛り首用の縄) にかけろ。
obesity
A 「この帯さぁ、小(obesity)さい。」
B 「肥満だからでしょっ!」
発音注意
rage
「零時 (rage) になっても帰ってこんのかあっー」と激怒する
regent
摂政になった外祖父 「摂政のじーちゃんと遊ぼうな。」
幼少の天皇 「ちぇっちょうのリーじゃんと (regent) ?」
摂政はregent。 (メモ: 外祖父…天皇に嫁がせた自分の娘が子を生んで、その子が天皇になれば「天皇の外祖父」になれる。)
rigid
理事ど (rigid) どもは頑固だ、
よく言えば厳格だが、
悪く言えば融通がきかない。
rodent
rodent (げっ歯類...ネズミやリスなど) が電線をかじって 漏電と なる。
saw (1)
「...って、 ことわざ にもあるだろ。」
「 そー (saw) だなあ...」
sigh
白河法皇は、「加茂川の水、山法師(僧兵)、それにスゴロクのサイ (sigh) だけは意のままに
ならん…サイ (sigh) だけでもままにならんかなあ…
サイ (sigh) だけでもなあ…サイ (sigh) だけでも…」と、ため息 をついたそうです。
spontaneously
A 「その時、スッポンが手に食いついてきたんです!」
B 「ほう!」
A 「あせりましたよ、思わず無意識に叫んじゃいました。」
B 「 スッポン、手に、あせり (spontaneously)、思わず無意識に ですか!」
totter
立った (totter) ら、よちよち歩く
(tatter = ぼろきれ という紛らわしい語もありますが、日本語の「立った」の音に近いのは、どちらかといえば totter でしょう。)
tow
A 「JAFを呼んで、直ったんですか?」
B 「いや、結局、とう (tow) とう、牽引するっきゃないってことに ...」
trigger
ハンター 「鳥が (trigger) いたので、引き金をひきました。」
さて「裏技」には、こんな変り種の方法もあります。sprain は語源不詳の語ですから、裏技的な覚え方があると助かる単語です。
「スベ ( sp ) ッた、雨
( rain ) の日、捻挫 ( sprain ) した、
ぎっくり腰 ( sprained lower back ) にもなっちゃった。」なんていうのはどうでしょう。
sp と「すべる」の連想はやや苦しいですが、
rain に注目すれば、「rain にぬれた道路でスペッて捻挫した」という状況がうかぶでしょう。こういう時には裏技の内容にぴったりする
例文があると効果的ですね。
いかがでしたか。語呂合わせ法の難点の一つは、語呂と、英語の発音やアクセントが微妙にずれていて、正しい音を覚える妨げになる場合があることでしょう。
何よりも前述したように、うまい語呂合わせはそう簡単に思いつくものではありません。
ところで上にもある diameter (直径) は、ギリシャ語の diametros が語源です。diametros は dia- (横切って) とmetron
(長さ) を組み合わせた語で、直径だけでなく、対角線、斜辺などの意味もありました。ですから語源的な説明から浮かんでくるイメージでは、「直径」だけを連想する
には少し無理があります。「あのすごいダイア、見たー?」「うん、直径二センチはあったな。」というような語呂合わせは、「直径」の記憶を補強するために役立って
くれそうです。せっかくですから、例文 も読んでおきましょう。
しかしまた、ギリシャ語の dia- という接頭辞は英語でも広く使われていますし、metron に由来する英単語も数多くあります。
私たちが提案する『 新英語辞典 』 では、
これらの語が、
dia-
の
表
と
me- 表2
の
表
に見やすく整理されています。 表を概観したら、先ずは、 diameter の 「間を貫いて(横切って) 測った長さ」 という語源的意味を再確認しましょう。
例文も読んで diameter を確実に覚えたら、更に、 dia や meter が共通するほかの語も意欲的に学んでいって欲しいと思います。
diarrhea についても、同じことが言えます。diarrhea は、ギリシャ語の diarrhoia が語源です。この語を語源的に分解すると、
dia- (間を) と rhein (流れる) になります。尾籠な話になってスミマセンが、正に「下痢」のイメージ
ですよね。 rhein (流れる) は遠くさかのぼれば印欧語根*sreu-に由来する語で、この語根から生まれた英単語も沢山ありますから、
語源別の一覧表で確認してください。
diarrhea
名詞
dia-
10
sreu-表2
10
例文
次の語も、語呂合わせだけでなく語源を理解してより確実に記憶しましょう。表を活用して語彙の幅も広げてください。
antecedent
形容詞
ante 表1
10
banishment
名詞
bha- (2) 表6
7
compensate
動詞
pendere 表3
4
conscious
形容詞
skei- 表2
11
語呂合わせ的記憶法に多くを望むことは出来ませんが、正統的なやり方を補足するものとして上手に取り入れる工夫をしましょう。